夏バテ対策におすすめの薬膳|暑い季節を元気に過ごす食材と簡単レシピ
夏になると、「体がだるい」「食欲がわかない」「寝ても疲れが取れない」といった不調を感じることはありませんか。
こうした夏特有の不調は、一般的に「夏バテ」と呼ばれています。
夏バテ対策では、単に栄養価の高いものを食べるだけでなく、その日の体調に合わせて食材を選ぶことが大切です。そこで取り入れたいのが、食材の性質を活用して体のバランスを整える「薬膳」の考え方です。
この記事では、夏バテを薬膳の視点から捉え、暑い季節におすすめの食材や、家庭で簡単に作れる薬膳レシピを紹介します。
⚠️ ご注意: 本記事は東洋医学・薬膳の一般的な情報をお伝えするものです。症状が重い場合、妊娠中や漢方薬の服用をお考えの場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
夏バテとは?
夏バテとは、夏の暑さや室内外の温度差などによって起こる、さまざまな体調不良の総称です。
主な症状として、次のようなものが挙げられます。
- 体がだるい
- 疲れが取れない
- 食欲が低下する
- 胃腸の調子が悪い
- 寝つきが悪い
- 頭が重い
- やる気が出ない
暑い時期には食欲が落ちやすく、そうめんやうどんなどの麺類だけで食事を済ませることも増えます。しかし、炭水化物に偏った食事が続くと、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどが不足しやすくなります。農林水産省も、暑い時期は食欲が落ちやすく、さっぱりした麺類だけでは栄養が偏りやすいと案内しています。
なお、夏バテと熱中症は異なります。
熱中症は、高温多湿な環境によって体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節がうまく働かなくなる状態です。めまい、頭痛、吐き気、強い倦怠感、意識障害などがある場合は、単なる夏バテと判断せず、速やかな対応が必要です。
薬膳では夏バテをどう考える?
薬膳の基礎となる中医学では、夏は「暑邪(しょじゃ)」と呼ばれる暑さの影響を受けやすい季節と考えます。
強い暑さによって汗をかくと、体内の水分だけでなく、活動するためのエネルギーである「気」も消耗するとされています。
また、日本の夏は湿度が高いため、「湿邪(しつじゃ)」の影響にも注意が必要です。体内に余分な水分がたまると、胃腸の働きが低下し、食欲不振や体の重だるさにつながると考えられています。
夏バテ対策の薬膳では、主に次の働きを持つ食材を組み合わせます。
- 体にこもった余分な熱を冷ます
- 汗によって失われた水分を補う
- 胃腸の働きを助ける
- 体内の余分な湿気を排出する
- 消耗した気を補う
ただし、体を冷やす食材ばかりを食べるのはおすすめできません。冷たい飲食物のとりすぎによって胃腸が冷えると、かえって食欲が落ちる場合があるからです。
農林水産省も、暑い時期であっても冷たいものに偏らず、温かい料理を取り入れて胃腸をいたわることを勧めています。
夏バテのタイプ別に選ぶ薬膳食材
夏バテの症状は人によって異なります。
薬膳では、現在の体調を確認し、それに合った食材を選ぶことが重要です。
1.暑さがこもっているタイプ
主な症状
- 体がほてる
- 顔が赤くなる
- 喉が渇く
- 冷たい飲み物を欲しがる
- 汗をたくさんかく
- イライラしやすい
暑さによって体内に熱がこもっていると考えられるタイプです。
おすすめの食材
- きゅうり
- トマト
- なす
- 冬瓜
- ゴーヤ
- すいか
- 緑豆
- 豆腐
- もやし
- ミント
きゅうりやトマト、すいかなどの夏野菜や果物は、水分を多く含み、暑い季節でも食べやすい食材です。
ただし、これらは薬膳では体を冷やす性質を持つものが多いため、冷えや胃腸の弱さがある人は食べすぎに注意しましょう。
2.汗をかいて消耗しているタイプ
主な症状
- 疲れやすい
- 少し動くだけで汗が出る
- 息切れしやすい
- 喉が渇く
- 口の中が乾く
- 元気が出ない
汗をかくことで、体内の水分と気を消耗していると考えられるタイプです。
おすすめの食材
- 山芋
- オクラ
- モロヘイヤ
- 豚肉
- 鶏肉
- 枝豆
- 大豆
- 卵
- 梅
- レモン
- ぶどう
山芋やオクラなどの粘りのある食材は、食欲が落ちているときにも取り入れやすいのが特徴です。
農林水産省でも、オクラやモロヘイヤ、山芋などの粘り気のある野菜は、夏の食事におすすめの食材として紹介されています。
また、豚肉にはエネルギー代謝に関わるビタミンB1が含まれています。麺類を食べる場合も、豚肉や卵、野菜などを加えると、食事の栄養バランスを整えやすくなります。
3.胃腸が弱っているタイプ
主な症状
- 食欲がない
- 少量でお腹がいっぱいになる
- 胃がもたれる
- 下痢や軟便になりやすい
- お腹が冷える
- 冷たいものを食べると調子が悪くなる
冷たい飲み物や食べ物のとりすぎにより、胃腸の働きが弱っていると考えられるタイプです。
おすすめの食材
- 米
- おかゆ
- 山芋
- かぼちゃ
- じゃがいも
- にんじん
- キャベツ
- 鶏肉
- 白身魚
- しょうが
- 大葉
このタイプは、生野菜や冷たい料理ばかりではなく、スープやおかゆ、蒸し料理などの温かい食事を取り入れましょう。
食欲がないからといって食事を抜くと、必要なエネルギーや水分、塩分を補いにくくなります。少量でも食べやすいおかゆやスープから始めるのがおすすめです。
4.体に湿気がたまっているタイプ
主な症状
- 体が重だるい
- 頭が重い
- むくみやすい
- 食欲がない
- 舌に白い苔が多い
- 雨の日に体調が悪くなる
湿度の高い環境や胃腸機能の低下によって、体内に余分な水分がたまっていると考えられるタイプです。
おすすめの食材
- とうもろこし
- はと麦
- 小豆
- 黒豆
- 緑豆
- 冬瓜
- きゅうり
- 枝豆
- しょうが
- 大葉
とうもろこしや小豆、はと麦などは、薬膳では体内の余分な水分を排出する食材として用いられます。
ただし、むくみが強い場合や、心臓・腎臓などの疾患がある場合は、自己判断で水分量を極端に減らさず、医師の指示に従ってください。厚生労働省も、治療中で水分摂取について指示を受けている場合は、その指示を優先するよう案内しています。
夏バテ対策に取り入れたい薬膳食材10選
1.トマト
トマトは水分が多く、食欲がない日でも食べやすい夏野菜です。
薬膳では、体にこもった熱を冷まし、喉の渇きを和らげる食材と考えられています。
冷えやすい人は、スープや炒め物など加熱して食べるとよいでしょう。
2.きゅうり
きゅうりは、薬膳では体の余分な熱を冷まし、水分代謝を助ける食材とされています。
体のほてりやむくみが気になる日に適していますが、胃腸が冷えやすい人は、大葉やしょうがなどの薬味と組み合わせましょう。
3.冬瓜
冬瓜は「冬」という字が入っていますが、夏が旬の野菜です。
薬膳では、体の熱を冷まし、余分な水分を排出する食材として用いられます。スープや煮物にすると、冷たいものを避けたい人でも取り入れやすくなります。
4.ゴーヤ
ゴーヤの苦味は、食欲が落ちやすい夏のアクセントになります。
薬膳では、体にこもった熱を冷ます食材とされています。卵や豚肉、豆腐と炒めることで、たんぱく質も一緒に補えます。
5.オクラ
オクラは、食欲が低下しているときにも食べやすい、粘りのある夏野菜です。
冷奴やそうめんに加えるだけでも、手軽に食事の品数を増やせます。
6.山芋
山芋は、薬膳では胃腸の働きを助け、消耗した気を補う食材と考えられています。
すりおろしてご飯やそばにかけるほか、加熱してスープや炒め物にするのもおすすめです。
7.枝豆
枝豆には、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどが含まれています。
薬膳では、胃腸を助けながら、余分な水分を排出する食材として使われます。食欲がないときの副菜や間食にも向いています。
8.豚肉
豚肉は、夏に不足しやすいたんぱく質を補える食材です。
ビタミンB1を含むため、ご飯や麺類などの炭水化物と組み合わせて食べるとよいでしょう。
脂身の多い部位が重く感じる場合は、豚もも肉や豚ヒレ肉、しゃぶしゃぶ用の薄切り肉などを選ぶと食べやすくなります。
9.梅干し
梅干しの酸味は、食欲がないときのアクセントになります。
薬膳では、酸味には汗のかきすぎを抑え、体内の水分を保つ働きがあると考えられています。
ただし、梅干しは塩分を多く含むため、食べすぎには注意しましょう。
通常の日常生活では、熱中症予防を目的として一律に塩分摂取量を増やす必要はありません。高血圧や腎臓病などで塩分制限を受けている人は、医師の指示を優先してください。
10.しょうが
しょうがは、冷房や冷たい飲食物によって体が冷えている人におすすめの食材です。
体のほてりが強い場合には使いすぎず、冷えや胃腸の不調があるときに少量を加えるとよいでしょう。
夏バテ対策におすすめの簡単薬膳レシピ
豚肉とオクラの梅おろしそうめん
食欲がない日でも食べやすく、たんぱく質と野菜を一緒にとれるレシピです。
材料:2人分
- そうめん:2束
- 豚しゃぶしゃぶ用肉:150g
- オクラ:4本
- 大根:5cm程度
- 梅干し:1個
- 大葉:4枚
- めんつゆ:適量
- 白ごま:適量
作り方
- オクラをゆでて、食べやすい大きさに切ります。
- 豚肉をゆで、火が通ったら冷まします。
- 大根をすりおろし、梅干しは種を取ってたたきます。
- そうめんをゆで、流水で洗って水気を切ります。
- 器にそうめん、豚肉、オクラ、大根おろし、梅、大葉を盛りつけます。
- めんつゆをかけ、白ごまを散らしたら完成です。
そうめんだけで済ませず、豚肉やオクラを加えることで、たんぱく質や野菜も補えます。
胃腸が冷えている場合は、そうめんを冷やしすぎず、温かいつゆで「にゅうめん」にするのもおすすめです。
冬瓜と鶏肉のしょうがスープ
体の余分な熱や水分が気になる一方、冷たい料理を避けたい人に適したスープです。
材料:2人分
- 冬瓜:200g
- 鶏もも肉または鶏むね肉:150g
- しょうが:1片
- 水:500ml
- 鶏がらスープの素:小さじ1
- 酒:大さじ1
- 塩:少々
- こしょう:少々
作り方
- 冬瓜は皮と種を取り、食べやすい大きさに切ります。
- 鶏肉を一口大に切り、しょうがは千切りにします。
- 鍋に水、鶏肉、しょうが、酒を入れて火にかけます。
- アクを取り、冬瓜と鶏がらスープの素を加えます。
- 冬瓜がやわらかくなるまで煮ます。
- 塩、こしょうで味を整えたら完成です。
トマトと卵の薬膳スープ
調理時間が短く、朝食や食欲がない日の一品にも向いています。
材料:2人分
- トマト:1個
- 卵:1個
- 長ねぎ:適量
- 水:400ml
- 鶏がらスープの素:小さじ1
- しょうゆ:小さじ1
- ごま油:少々
- 塩、こしょう:少々
作り方
- トマトを食べやすい大きさに切ります。
- 鍋に水と鶏がらスープの素を入れて沸かします。
- トマトを加えて軽く煮ます。
- 溶き卵を回し入れます。
- しょうゆ、塩、こしょうで味を整えます。
- 長ねぎとごま油を加えたら完成です。
体を冷やしやすいトマトも、温かいスープにすることで胃腸への負担を抑えやすくなります。
山芋と枝豆の薬膳ごはん
胃腸が弱っているときや、体力の消耗を感じるときにおすすめです。
材料:2合分
- 米:2合
- 山芋:150g
- むき枝豆:80g
- しょうが:1片
- 酒:大さじ1
- しょうゆ:大さじ1
- 塩:少々
- だし汁:適量
作り方
- 山芋は皮をむき、1〜2cm角に切ります。
- しょうがを千切りにします。
- 炊飯器に研いだ米、酒、しょうゆ、塩を入れます。
- 2合の目盛りまでだし汁を加えます。
- 山芋としょうがをのせて炊飯します。
- 炊き上がったら枝豆を加え、全体を混ぜます。
夏バテを防ぐ食事のポイント
麺類だけで済ませない
食欲がない日は、そうめんや冷やしうどんが中心になりがちです。
麺類を食べる場合は、次のような食材をトッピングしましょう。
- 豚肉
- 鶏肉
- 卵
- 豆腐
- 納豆
- オクラ
- トマト
- 大葉
- わかめ
一皿にたんぱく質と野菜を加えることで、栄養バランスを整えやすくなります。
冷たいものをとりすぎない
冷たい飲み物やアイス、生野菜ばかりをとると、胃腸が冷えて食欲が低下することがあります。
常温の飲み物や温かいスープ、みそ汁なども取り入れましょう。
特に、もともと冷えやすい人や下痢をしやすい人は、体を冷やす食材を加熱して食べるのがおすすめです。
香味野菜や酸味を活用する
食欲がないときは、しょうが、大葉、みょうが、ねぎなどの香味野菜を活用しましょう。
梅、レモン、酢などの酸味を加えると、さっぱりとした味になり、食べやすくなります。
朝食を抜かない
朝食を抜くと、食事から得られる水分や塩分、エネルギーを補う機会も減ってしまいます。
厚生労働省の熱中症予防情報でも、朝食をとらないことや睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良は、熱中症の発症に影響する可能性があるとされています。
食欲がない朝は、おにぎり、みそ汁、バナナ、ヨーグルト、卵スープなど、少量でも食べやすいものを選びましょう。
水分をこまめに補給する
食事だけでなく、水分補給も欠かせません。
喉が渇いてから一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに補給しましょう。
大量に汗をかいた場合は、状況に応じてスポーツドリンクや経口補水液が役立ちます。ただし、日常的に塩分や糖分を多くとりすぎないよう注意が必要です。
夏バテ対策で注意したいこと
薬膳や食事は、日々の体調管理を支える方法のひとつです。病気そのものを治療するものではありません。
次のような症状がある場合は、食事だけで対処せず、医療機関への相談を検討してください。
- 水分をとれない
- 嘔吐や下痢が続いている
- 強い頭痛がある
- めまいや立ちくらみがある
- 意識がぼんやりしている
- 受け答えがおかしい
- 高熱がある
- 数日休んでも強い倦怠感が改善しない
めまい、吐き気、頭痛、虚脱感、意識障害などは熱中症でも見られる症状です。熱中症が疑われる場合は涼しい場所へ移動し、体を冷やすなどの応急処置を行い、必要に応じて救急要請をしてください。
まとめ|体調に合った薬膳で夏バテを防ごう
夏バテ対策の薬膳では、夏野菜を食べるだけでなく、自分の体調に合わせて食材を選ぶことが大切です。
体に熱がこもっているときは、トマトやきゅうり、冬瓜などを取り入れます。汗をかいて疲れているときは、山芋やオクラ、豚肉、卵などで気と栄養を補いましょう。
一方、胃腸が冷えているときは、生野菜や冷たい飲み物を控え、スープやおかゆなどの温かい料理がおすすめです。
薬膳は、特別な生薬を使わなくても始められます。
旬の食材や身近な食材を組み合わせながら、無理なく食事を整え、暑い夏を健やかに乗り切りましょう。
